ジョイス文学は民衆の成長を想定していない

しょせんアイルランドの市民なんてこんなもんだ、という視点から書かれている気がする。
市民が蜂起したり成長したりするような感じは受けない。
アイルランドでは労働者による社会主義革命もまったく実らなかったようだ。(「ペインフルケース」参照)
だがギャンブルの話があったりして、それは愉快ではある。
国際色豊かな小説で、「アフターザレース」という題だった。
いろんな描き方ができる作家だ。
しかし多作というほどではない。
質を重視したのだろうか?
アイルランドやイギリスの近代作家というのは、さほど多く作品を残さない気がする。
アイルランドは、今ギリシャと並んでユーロ通貨圏から落ちこぼれてしまっているらしい。
ジョイス文学を読むと、さもありなんという感じを受けるから不思議である。