言葉狩り

どうも
事態が悪化するにつれて
人の心を傷つけそうなことばが
僕たちから逃げ出していっているように思う

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これは文学的退行であって
意味あることばを忌み
意味への認識を鈍化させ
意味不明の事態を招く前近代的な祭儀である

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そのいっぽうで
僕たち国民さんの身体への傷は
逓増しているような気がする
忌み言葉がひっこんで忌み事象が迫っている

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「天罰」
これは昔ならば
村の祭祀をつかさどる人間が
道々を半狂乱で走り回って
伝える言葉だ

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あえてこのようなことを言って
人々の気持ちを引き締めようとした
都知事たる人の発言は
文学者としてのひとつの態度だととらえたい

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問題はこちら側が
そこから対話にいたらず
ヒステリーを起こして
不謹慎の一言で弁を閉じることだ

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戦争中も
不謹慎からはじまって
すぐに非国民になったようであり
頭ごなしに言葉をとらえて正しく激怒しようとするのは決してよいことではない

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どれだけ被災者を傷つけようが
傷つけまいが
求められるべきなのは
よきアフターマスなのだ

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天皇が液晶面に照りかがやき
わが家でも話していた
天皇の言葉は思いやりであふれていたが
精神論であった

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人間の心がクライシスに耐えられる時間は
おそらく96時間ほどだろう
もはやほとんど麻痺してしまった
火災が鎮火される前に危機感覚が鎮火された

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今でも危機感をもってやっているのは
アメリカくらいだろう
国民さんたちは誰もがわがこととして
いまいち受け入れられていない

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もともと日本は
初動はうまくいくことが多いように思う
太平洋戦争でもそうであった
ところが今回は最初からだめである

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どうもすでに
事後の責任を回避するように回避するように
お偉方みんなが動いているようである
実は目先の事態に対しては腰が入っていないのかもしれない