小説中でイェーツの詩に対する言及があったが

In dreams begin the responsibilities
というところに、その作家は
「夢は責任から始まる」と訳していたが、そうとは思えない
「夢を責任から始める」じゃないの?
これは詩人の自らの夢に対する私的な戒めであって、夢の一般論を言ったのではなかろう。
それを、夢一般に対してみなさんは責任を持たないといけないんだよと解釈するのは、どうだろうか。
詩人以外のものが詩人の夢に責任をもとうとしても、どのみち実現できないのだから、かえってこじれて悪い結果になることが多かろうと思う。
それならば最初から責任感を持たないほうがましである。
そのほうがいい結果になると思う。
というふうに言うと、詩人を特別視しているようであり、じゃあお前は詩人かと言われると、そうでもないと言わざるをえないので、こういうことは言わないほうがいいのである。

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意味不明な責任感をもっともらしい引用をまじえて読者に喚起させるということは、作家の常套戦略なので、今に始まったことではなく、これをとりたてて悪し様に言ってもしようがない。が、チラ見せするように、さわると大火傷するような文学者の書いたとされるものの短い引用を持ち出すのは感心しない。