38、わすらるるみをばおもわずちかひてしひとのいのちのおしくもあるがな

女の浅知恵がよく出た歌である
女は法律や政治に関わるべきではないとされていた。それをこの女はよく知っているはずである。
にもかかわらず、男女の性愛関連行為時に漏れでた誓いにたいしてなんらかの法的効果があると思い込んむ。いや、思い込んだふりをして歌っているのである
ここに出ているのは媚びであろう
コケーティッシュといっても良い
頼んでも甲斐もないものに対して頼む。最初は貴なる男。
男がだめになったら今度はありもしない性愛における信義誠実を守るべし。守らぬ者は命とらるるべし、というような条文のない法に頼む。
神仏にたいしてこの歌を詠んではどうだろう?
おそらくバチが当たる。どちらがバチ当たりかというと、よりバチ当たりなのは不誠実な男よりも歌を詠んだ女のほうである
(そもそも性愛に不誠実なほうが仏道としては正しい。発心を起こして女を断つほうが正しい道である)
この歌は、性欲肯定である現世においては同情される歌となりうる
とくに同性から同情されるのである
口だけ泣き言をいうのであれば、男からすれば御しやすい
この女が刃物を持って男性宅に押しかけるようなことは、まずなかろう