実験小説

『よい子』二

二 僕は頭を打った気がした。 いやぶたれた気がした。 ぶたれる、ということとぶーたれる、ということは受動と能動の違いがあり、さらに意味が異なる。 ぶたれたであろうということに関して僕はぶーたれたかった。 なぜなら痛かったからだ。 後頭部にこぶが…

『よい子』 一、

一、 よい子のはずだった。 正しい知識と体験を積み重ねたならば、よい子になるはずであった。 よい子というのは、万人が認めるよい子である。 階級、宗教、所属する法人、その他の雑多細目なコミュニティーの違いによらず、よい子はよい子でなければならな…