初夏

初夏であるので
「ひかりさす露乾きけりとびまわる鳥の健脚羽音高かり」
選挙カーもあと一日も走るまい時の経過は音運び去る」
猫を見ていたこの猫はもう死ぬ
座っていたら重い肩も肉も尻も
悩みを打ち明ける気などない
悩みを作成しない思考を行う
悩みはおおむねよどみであって思考の熟極ではない
スマートさを考える
……音もなく流れなくては!
電子が音もなく流れるというと音は不純物ないし化合物の
不意に衝突によるとせねばいけない
それは音を耳によって生じる錯誤的認識とせねばならぬ
音楽が好きなのではなくて慣習が好きなので
クラシカルないしアンチカスタム、アンチクラシカルな音楽が好まれるのだとしたら
音楽は低俗であり
必然的な美ではない
美が
必死に努力して美たろうとするか
だが
それでいくと
世の美しいものから
作為性の艶福を排除して
あのままの美を見つけねばならぬ

そこには近代的美があろうはずがないのだ
わたしを困らせているのはそこである

美を操りたいが
手は嫌いである
美にかしづぎたいが
奴隷はだめである
美を貪りたいが
満腹はごめんである
美を買い戻したいが
権利行使と思われたくない