情報教
情報が
正しいか間違っているのか
隠蔽されているか歪曲されているのか
わからない
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わからないといえば
放射能のことである
放射能は無味無臭ということだ
擬人化できず
擬人化できないものは
形容できない
苛烈とも鮮烈とも
熾烈とも猛烈とも
なんともいいようがない
ただわかるのは
寿命を大いに縮めるだろうという
ことだけである
それだけがわかっていて
それ以外はわからない
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これは
身体の問題で
個人の身体が同時多発的に
損傷を受けかどうかの問題であって
いちど鬼っこの放射能氏が
−−あえてひとつの人格として
放射能氏と呼ぶ事にする−−
氏が箱を出て呼吸をしたら
−−日本という箱の中で呼吸をする−−
こっけいな事だが
こちらの呼吸がきわめてうまくいかなくなりやすくなるのだ
しかも窒息ではなく
呼吸後に違和感を覚えざるをえなくなるのだ
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氏に対して
人間は軽蔑し下に見て
奴隷にして
強制作業場で労働させることはできるが
氏が地震やなんかの理由で脱獄し
そのあと
無邪気な空中遊覧やみゆきごっこをすれば
人間が困るということのようである
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氏は透明で
ゼウスのように姿を消し
どこにでも行ける
天使のような羽はないが
そのかわりとても氏は軽いし
ミクロ化することができて
あちこちに旅行できるのである
宇宙たんぽぽのわたげのように
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その場合
人間が死ぬのであって
人間は死ぬのだから
人間が死ぬようだから
人間は死ぬことになるそうであり
人間が死ぬのはいつか死ぬのであり
ということは
人間が死ぬとしてもただちに死ぬわけではない
人間はみないずれ死ぬのである
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遡及的に人間を殺すことはできない
氏は顔のない死神であるが
氏を裁判で因果関係を問うと
ぽかんと見えない口を開けるだろう
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ただちにというのは
放射能の極小さに
寄り添った表現であり
すでに言語的には
日本語は汚染された