白人学生とのひととき

かれは「電車が参ります」と言って電車に入ってきて
僕のとなりに立ち
計器を見ていた
計器のランプ類が
あっちやらこっちで
明滅しているのをながめてかれは
「どう動いてるんだ」と
心から疑問に思っている風に言葉を発した
僕はというと
計器を見るのに一生懸命であり
隣のエリイト風サラリイマンは
ペイパアを読むのに一生懸命であった
しばらくするとかれはのりだしてきて
かれのひじが
ぼくのひじを
あきらかに圧(お)してきた
そこで僕はほんの少しずつ
左の方角にずれていったのである
やがて下車駅につき
彼はどういうわけか
「一番線に参ります」
と言った
僕は下車をして
いくつか惣菜を買って帰った