平野謙、戦時中のことについて隠蔽工作

情報局にいた頃の話を言わないように関係者に触れ回っていたらしい
そればかりか、あろうことかなんとかという作家にありもしない罪を着せて葬り去ったらしい
その葬り去り方というのが、自らの文壇での立場を利用してやったようなのだ
これは少し残念だ
いや、大いに残念である
こういった保身は非常によろしくない

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ただ、相手の側の弟子が師匠の死後に発表したことらしいので、どうも真相はわからない。
しかも、その弟子があまりできる弟子ではないみたいだから信用できるものではない。
弟子だから信用するということより愚かしいことはこの世にそれほど多くはない。

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なんでこういう人が弟子なんだろう、そして師匠の死後にどうしようもないことを言い出すんだろうとよく思うのだが、おそらくこういうことだ。
師匠が恐れ多すぎて誰も自分が弟子であるということを生前ですら言えない。
死後ならなおさらである。
ところが、厚顔無恥ながら現世的政治力だけはあり、自分の才覚に対してほとんど誤解をしている者が、我こそは弟子であると言い出してまわりのもっとできる弟子的立場にいた人たちがあっけにとられている間に出版社に俺は師匠の本を出すぞと持ちかける。
面白がって売れればいいだけの出版社は承諾し、出版してしまう。
そうして世にもくだらぬ、いわゆる「暴露本」が世に出回ることになるのである。
なにしろ薄汚い(squalor)世の中なので、こういうことは致し方がない。