サーカス

そこに行かないと見られないもの
ところが現在は、見るだけならテレビでいくらでも見れる
見ることの価値が薄れた
いつでも誰でもなんでも見うる

  • -

それだけではない
見たことに対して、ぼやけることがなくなった
記憶上の映像と実際の態様が分断されることはありえなくなった
昔見たものが年を経て変化することはあるかもしれないが、昔見たもの自体が実は違った様子だったのかもしれないという気もちは持てなくなったはずである
誰かが映像記録に残しているということが原因かも知れぬ
記憶ではこうだった、といってもそれが間違っていたら馬鹿にされてしまう
だから作家の中には、誰の記憶でもないが誰の記憶でもある、というような、
中間記憶、とでも言うべきものに手を染める人もいるのか。
さじ加減が難しかろうが、当たればでかい。
誰もが記憶を整理したいだろうから。