火の出るような女文学者がいて

それに啓発されれば僕もいっぱしの文学者になれるかもしれぬ
しかしそのような人間がいたとして
僕に目をかけてくれるとも思えない
しかしただの狂人というところまで敷居をさげれば
あるいはそこいらにもいるのかもしれぬ
あえて狂人の醜女を娶って
彼女を養うために
文学作品を書かねばならぬという状況にもっていけば
あるいは僕の文学は始動するのであろうか?
しかし共倒れになる可能性もある
ここが難しいところである
結局何もしなければ傷の大きさは最小で済む
しかし何もしないことによる老化はいかんともしがたい
老化こそ文学者の宿痾である
太宰ですらそれに打ち克てなかったらしい
老成すればよかろうとも思うが
老成できる種類の文学者とそうでない種類の文学者がいる
文学者の老成は難しくしかも人の手を借りなければできない
たとえば太宰が名だたる文学賞を大量に受賞したとして
そのまま文学官僚にまで上り詰めたとして
それが太宰にとっていいことかどうか
本当の愛情があるのであれば
あるべき死の形を実現させるほうに向かせたほうが
いいのかもしれぬ
ただ太宰に引導を渡した川端という男が
結局最後はどうしようもないガス自殺という最低点に堕したのは
敗北宣言をしたようで
まったくしょうもない
若い女を巻き込むというのが川端の自殺の最善の策だったはずである
それができないのであるなら
最初から自殺などやらないほうがずっとよかった
それをわかっててやるのだから
首がだいぶ傾がる
かなりのぼけもあったのだろう