カジョール

ぼくは亡霊の声にカジョールされそうになったが
いまいち聞き取りにくかったので
意味を判ぜず
かろうじてたすかったようである
ところがたすかったとはいえ
みじめな暮らしが立ちはだかっているのもまた確かであるので
次のカジョールに耳をすませたいのであろうが
順応精神がそれを許さないし
複雑なプライドによってプライドに入れないのである
なにより加齢のせいかしらんが
耳は少し遠くなった