デビュタント

僕はちょっとしたデビュタントになって
やがては大成してみたくもあるが
早くも板ばさみを予感してもいるのである
十中八九僕を待ち受けているのは
成功のあとにくるであろうこれら−−
邪推(向こうからこちらに来る無数の矢のような)
誤解(こちらから向こうへ強いられる)
軽蔑(お互いの立場から発せられ消化し合うべく仕組まれた)
−−であり
この三種が僕を
死地へ赴かせかねないのである
死地というものに
未知は賭けられているのであって
そこに賭けられている通貨はこの世のものではないのであり
つまりは死んでも貨幣経済上の敗北にはならないがゆえに
損が確定しないということが
運命づけられている
そがゆえに
死は若干容易ならしめられているのである
死が
一身上の都合によって可能となっているから
誰も巻き込まぬのであって
巻き込むとしてもよほど親しい人間だけであり
それは統計的にみると誤差の範囲内である
人が死んで不愉快になる者があるとすれば
それは利害関係を持つ者だけであることは
少なくとも奨励されている