或中年Y一日奮闘記 (3)

「恐ろしい淫夢を見たもんだ」Yは恐ろしくなった。このような身も蓋もない会話を、花も恥らう十代の乙女がしようはずもないのである。このような、卑俗な、わいせつな、人をくった夢を見たことを戒めるために、Yは瞑想することにした。
瞑想の中で、彼は天馬となって人間界を見て回った。
どこもかしこも悔しそうな顔の貧乏人であふれている。
素朴さが、近代機器によって鼻を明かされ、泡を吹いているさまを多く見た。
どれもこれも電気と人をくっているのである。
しかし、だからといって近代機器がまったくないところでは、前近代的蛮習が幅をきかせており、ここにも笑顔はないのであった。
笑顔は絵の中にしかなかった。
Yは天馬が気に入らなくなったので、馬刺しにして”至高なる精神”に献上した。
そうやって瞑想から覚めるともう夕方になっていた。