『草枕』における鈍感さ

どうしても僕が気になるのは
草枕』において主人公の口から語られる文化上の「正しい」知識が
現実に即応するというよりも
鈍感さからくる強引なあてはめによって現実を誤認識するほうに働いているように思えるからである
草枕』が一流の作品になるためには、現実の事象を見て文化上の「正しい」知識をあてはめようとする際に、現実があてはめに対して身をよじり殴り返してくるというところまで書かなければならなかった
全般的に言って、漱石がやっているのは、近代日本におけるここまでならわかるというところを集めてできた貼り絵であり、ここからはちょっとわからないというところは捨象しているのである。
結果としてできた貼り絵は、全部のピースが正しい。しかし全体としてはどうなのか。