そうはいっても・・・

文学においては
人格と出自はいっさい関係ないということもまた確かであり
僕は何も物怖じすることはないということも明確に意識すべきである
しかしそれを実際上、物にするときには
当然人格も出自も問題になる
作家はその際はっきりと売りやすいものにへんげするのである
だが僕は作家を排水口にへばりつくよごれのカタマリのようなものでなければならないとも思うのである
そもそも文学は
どうしても独立していなければならぬ
それも哲人の国におけるような独立でなければならぬ
哲人の頭領のようなソクラテス
本を書くことに強い欺瞞を感じていたらしいのである
哲学書は当然書かれるべきであるはずだが
即興性をソクラテスはどうやら重視していた