俳句

やみがかった朝に詠む 5句

よれそれてくごうにまどふおのれの血 息するも絶え絶えなりし生きるだけ しずらかに虫に重ねる秋の息 食べるだけくるしみつのる肉の道 ヴァカンスに行く必要を認めたり

改句

きゐぴゐとしろいつ色の空いずこ ※なぜこうしたかというと何処どこ、という漢字に対して僕の感覚が相違を示していたことをいまになって痛感したからである。何処とかいていずこ、とも読めるが・・・ そのような漢語熟語によって表現すべきものではなかった。…

2月の寒い日に見慣れぬとりおりて

きいぴいと白一色の空の何処

文学俳句

妻が美女そがゆえに死ぬプーシキン 啄木は孤独を性でごまかした キリストにすがりて泣きぬ禁治産 殴られて手が使えなくなるをんな

都会について

体臭も大気も何も混ざる昼 声の波足の波間にだんごむし 街路樹に虫もなかなかいない春 春になりまた大群が押しよせる 大群と入れ替わり去るふるきもの にらむめは多忙の先か失望か 看板は朽ちかけてなおあらわせり 自信家が上は見ないで下を見る 僕が踏む前…

体調不良の句

起きてすぐ大音声で死ねと言われ 起きてすぐ指千本にせりあがる 目が覚めて夢の地獄になお勝る

自由律

かねおんなすべてにげていき ためいきをつくまでもなく日は暮れる なじられてさげすまされて三十路越え 人は皆われより偉い構造上 あめりかの自由に託すゆめをみる わが恋も夢も希望も持ち去られ

自由律

かねおんなすべて逃がしたり

台風のあと

野分去り昨日のあしたに蝉捨てつ 蟻のいぬ都会の蝉の三ヶ月

一つ、アスファルトにいたみみず

ひからびたみみず一匹石畳

冬など

寒がりを見せておどけるひとの妻 ゆきどけて蜜柑ころがる野辺の土 しんとしむつめたきになお足を踏む しずけきに犬追う子らの笑い声 野の花のおつる間際に雪を見て 夜半の雨雪をとほって雪に落ち ○なかなかいいようでぜんぜんだめなような・・・俳句はむつか…

初秋 8つ

秋はじめ帳尻合わせの寒さかな 落ち葉もなく枯葉もない石の町 人情は金と打算にまみれてる 飛ぶ鳥はからすだけだがそれも少い 秋といえ食べ物うまくなりはせぬ 寒き房にさみしさを詰めたぶどう 広場で息を吐くその広場がない 吐(つ)いた息人の歩みに消され…

おぼろ月について 6つ

おぼろ月、六本木ヒルズより高い 雲で隠れてゐるが、何重にも光を通してゐる 白きひかり、たをやかで老いてゐる 高き塔 遙か見下ろす 月のなり 自然なひかり 淀まず たなびきすぎず おさまるべき 箱にはひるひかり ただし箱が箱でない

雨の日 6つ

傘を置いて漫画を読み 傘をもう取れない 雨が降れば サラリーマンは こそ泥になる ふつつかもの 雨に振られ 傘取らる 二宮に 少し似てるが 違うよと 浮浪者の禿頭 臭うが我慢 演説者 過去の延長で話す 当然だ